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Gemini 1.5 Pro
ジェミニ 1.5 プロ
Gemini 1.5 Pro とは
Gemini 1.5 Pro は、Google が 2024年2月にリリースした大規模マルチモーダル AI モデルです。Gemini ファミリーの中核を担うモデルで、最大200万トークンという業界最大級のコンテキストウィンドウを持ちます。
Gemini 1.5 Pro の最大の特徴は、テキスト、画像、動画、音声、コードを統合的に処理できるマルチモーダル能力です。例えば、1時間の動画を分析して内容を要約したり、数百ページの PDF を読み込んで質問に答えたりできます。
Gemini ファミリーの位置付け
Google の Gemini シリーズは、3つの主要モデルで構成されています。
Gemini ファミリー
Gemini 1.0 Nano:
- 最も軽量、オンデバイス向け
- スマートフォンで動作
- Pixel 8 Pro などに搭載
Gemini 1.5 Flash:
- 高速・低コスト
- リアルタイムアプリケーション向け
- バランスの取れた性能
Gemini 1.5 Pro:
- 最高性能
- 複雑なタスクに対応
- 超長文処理が可能Gemini 1.5 Pro は、最上位モデルとして、最も複雑で高度なタスクに対応します。
圧倒的なコンテキストウィンドウ
Gemini 1.5 Pro の最大の特徴は、200万トークンという圧倒的なコンテキストウィンドウです。
200万トークンの規模
200万トークンでできること:
- 書籍 約10冊分(各15万語)
- 映画の脚本 約50本分
- コードベース 約3万行
- 動画 約2時間分
- 音声 約22時間分
これは他のモデルと比較して圧倒的な規模です他モデルとの比較
Gemini 1.5 Pro: 200万トークン(実験的)、100万トークン(標準)
Claude 3.5 Sonnet: 20万トークン
GPT-4 Turbo: 12.8万トークン
GPT-4o: 12.8万トークン
Gemini 1.5 Pro は他の約10倍のコンテキストを処理可能実用的なメリット
長いコンテキストウィンドウは、様々な実用的なメリットをもたらします。
例1: 大規模コードベースの理解
- プロジェクト全体のコードを一度に読み込む
- ファイル間の依存関係を理解
- リファクタリングの提案
例2: 長編動画の分析
- 映画やドキュメンタリーを丸ごと分析
- 重要なシーンの抽出
- 内容の要約
例3: 研究論文の比較
- 複数の論文を同時に読み込む
- 共通点と相違点を抽出
- 研究トレンドの分析マルチモーダル能力
Gemini 1.5 Pro は、複数のモダリティをネイティブに処理できます。
処理できるモダリティ
テキスト:
- 自然言語の理解と生成
- 100以上の言語に対応
画像:
- 写真、図表、グラフの理解
- OCR(文字認識)
- 視覚的推論
動画:
- 動画の内容理解
- シーンの分析
- 時系列の把握
音声:
- 音声認識
- 話者の識別
- 背景音の理解
コード:
- プログラムの理解と生成
- バグの発見
- コードレビューマルチモーダルの実例
異なるモダリティを組み合わせた高度なタスクが可能です。
例: 動画解説
ユーザー: 「この料理動画の手順を文字で説明して」(動画アップロード)
Gemini 1.5 Pro:
1. 動画全体を視聴
2. 各ステップを時系列で理解
3. 材料と調理手順を抽出
4. テキストでわかりやすく説明
「この動画では、まず玉ねぎをみじん切りにして...」Gemini 1.5 Pro のベンチマーク性能
Gemini 1.5 Pro は、様々なベンチマークで高い性能を示しています。
主要ベンチマークの比較
| ベンチマーク | Gemini 1.5 Pro | GPT-4o | Claude 3.5 Sonnet | GPT-4 Turbo |
|---|---|---|---|---|
| MMLU(知識) | 85.9% | 88.7% | 88.7% | 86.5% |
| HumanEval(コーディング) | 71.9% | 90.2% | 92.0% | 87.6% |
| GSM8K(算数) | 91.7% | 95.8% | 96.4% | 94.2% |
| MATH(高度な数学) | 58.5% | 76.6% | 71.1% | 72.2% |
| MMMU(マルチモーダル) | 62.2% | 69.1% | 不明 | 61.7% |
長文理解ベンチマーク
Gemini 1.5 Pro は、長文処理のベンチマークで特に優れています。
Needle in a Haystack テスト:
- 膨大な文書の中から特定の情報を見つける
- Gemini 1.5 Pro は 99% 以上の精度で成功
- 100万トークン以上の文書でも高精度
長文要約:
- 長編小説や研究論文の要約
- 重要な情報を正確に抽出
- 文脈を保ちながら簡潔にまとめる動画理解
動画の内容理解でも優れた性能を発揮します。
Video Understanding Benchmark:
- 動画の内容に関する質問に回答
- シーンの変化を認識
- 時系列の理解
例:
動画: 1時間のドキュメンタリー
質問: 「このドキュメンタリーの主要なテーマは?」
Gemini 1.5 Pro: 正確に要約し、重要なシーンを引用Gemini 1.5 Pro の料金
Gemini 1.5 Pro は、コンテキスト長に応じた料金体系を採用しています。
API 料金(2024年時点)
128K トークン以下:
- 入力: $1.25 / 1M トークン
- 出力: $5.00 / 1M トークン
128K 超:
- 入力: $2.50 / 1M トークン
- 出力: $10.00 / 1M トークン
非常に競争力のある価格設定コスト比較
Gemini 1.5 Pro (128K以下): $1.25/$5.00
GPT-4o: $2.50/$10.00
Claude 3.5 Sonnet: $3.00/$15.00
GPT-4 Turbo: $10.00/$30.00
短いコンテキストでは、Gemini 1.5 Pro が最も安価Gemini 1.5 Pro の得意分野
Gemini 1.5 Pro が特に優れている分野を紹介します。
長文書の分析
膨大な文書を一度に処理できます。
用途:
- 法律文書の分析(契約書、判例)
- 医療記録の要約
- 研究論文のレビュー
- ビジネスレポートの比較
特徴:
- 複数の文書を同時に読み込める
- 文脈を保ちながら分析
- 重要な情報を正確に抽出動画・音声の処理
動画や音声を理解し、分析できます。
用途:
- 会議の議事録作成
- 講義動画の要約
- 映画やドラマの内容分析
- ポッドキャストの文字起こしと要約
特徴:
- 長時間の動画・音声に対応
- 話者の識別
- 重要な部分の抽出コードベースの理解
大規模なコードベースを理解し、分析できます。
用途:
- レガシーコードの理解
- プロジェクト全体の設計把握
- リファクタリングの提案
- ドキュメント生成
特徴:
- 数万行のコードを一度に処理
- ファイル間の依存関係を理解
- アーキテクチャを把握多言語対応
100以上の言語をサポートし、翻訳も得意です。
用途:
- 多言語文書の翻訳
- グローバルなカスタマーサポート
- 多言語コンテンツの分析
特徴:
- 高精度な翻訳
- 文化的なニュアンスも理解
- 多言語間の比較分析Gemini 1.5 Pro の実用例
実際のアプリケーションでの活用例を紹介します。
法律業界
契約書の分析:
- 複数の契約書を同時に読み込む
- 問題点やリスクを特定
- 類似契約との比較
判例検索:
- 膨大な判例データベースから関連判例を検索
- 判決の傾向を分析医療業界
医療記録の要約:
- 患者の長期間にわたる記録を要約
- 重要な情報を抽出
- 診断の補助
研究論文のレビュー:
- 最新の研究動向を把握
- 複数の論文を比較分析教育
講義動画の要約:
- オンライン講義を文字起こし
- 重要なポイントを抽出
- 学習資料の自動生成
多言語学習サポート:
- 外国語の文書を解説
- 文化的背景も説明エンターテインメント
コンテンツ分析:
- 映画やドラマのストーリー分析
- キャラクター関係の可視化
- テーマの抽出
クリエイティブ支援:
- 脚本の推敲
- アイデアのブレインストーミングGemini 1.5 Pro の制限事項
Gemini 1.5 Pro にもいくつかの制限があります。
コーディング能力
制限:
- HumanEval で 71.9%(GPT-4o の 90.2%、Claude 3.5 Sonnet の 92.0% より低い)
- 複雑なアルゴリズムの実装で劣る
対策:
- コーディング専門タスクでは他のモデルを検討
- Gemini 1.5 Pro は大規模コードベースの理解に特化数学的推論
制限:
- MATH で 58.5%(他の主要モデルより低い)
- 高度な数学問題の解決が苦手
対策:
- 数学的計算には専用ツールを併用
- 他のモデル(GPT-4o など)を検討コンテキストウィンドウのコスト
制限:
- 128K を超えると料金が2倍になる
- 200万トークンを使うと非常に高額
対策:
- 必要な部分だけを抽出して処理
- 要約やチャンキングで長さを削減Gemini vs GPT-4o vs Claude 3.5 Sonnet
主要な3つのモデルを比較します。
強みの比較
Gemini 1.5 Pro の強み:
- 超長文処理(200万トークン)
- 動画・音声の理解
- 多言語対応
- 低コスト(128K以下)
GPT-4o の強み:
- 高度な数学(MATH: 76.6%)
- コーディング(HumanEval: 90.2%)
- マルチモーダル(MMMU: 69.1%)
- 音声のリアルタイム処理
Claude 3.5 Sonnet の強み:
- コーディング(HumanEval: 92.0%)
- 詳細な推論
- 安全性
- バランスの取れた性能使い分けの指針
Gemini 1.5 Pro を選ぶべき場面:
- 超長文の文書処理
- 動画・音声の分析
- 多言語対応が重要
- コストを抑えたい(短いコンテキスト)
GPT-4o を選ぶべき場面:
- 高度な数学的計算
- 音声のリアルタイム対話
- バランスの取れた性能
Claude 3.5 Sonnet を選ぶべき場面:
- プログラミング支援
- 詳細な推論
- 安全性が重要まとめ
Gemini 1.5 Pro は、Google が開発した次世代マルチモーダル AI モデルです。200万トークンという圧倒的なコンテキストウィンドウと、テキスト・画像・動画・音声を統合処理する能力が特徴です。
重要なポイント
- 超長文処理 - 200万トークン、業界最大級のコンテキストウィンドウ
- マルチモーダル - テキスト、画像、動画、音声、コードを統合処理
- コスパ - 128K以下では $1.25/$5.00 と非常に安価
- 多言語 - 100以上の言語に対応
- 動画理解 - 長時間の動画を分析・要約
Gemini 1.5 Pro が最適な用途
- 大規模文書の分析と要約
- 動画・音声コンテンツの処理
- 大規模コードベースの理解
- 多言語翻訳と分析
- 長期的な文脈を必要とするタスク
Gemini 1.5 Pro は、超長文処理とマルチモーダル能力で他のモデルを圧倒します。特に、膨大な情報を一度に処理する必要があるアプリケーションでは、最高の選択肢の一つと言えるでしょう。